く だ ら な い 話
くだらない事で喧嘩した。
その時丁度風邪気味で、外は大雨が降っていて。
勢いだけで飛び出してしまったから、傘なんて持ってない。
そのまま行く宛てもなく、そこら辺りを気が済むまで走り続けた。
だけどどんなに走っても気が済むなんて事はなくて。
少し変わった事と言ったら、だんだん苦しくなってきたって事くらい。
走って暖かくなるはずなのに、妙に寒気がする。だけど走った。
何処まで走ったか分からなくなってきた頃、重たかった身体が動かなくなって、
のんびりと歩く事しか出来なくなった。視界がかすんだ。のんびりと歩く事も次第に出来なくなって。
そして世界は真っ暗になった。
また世界が色づいた時、喧嘩してたはずの同居人がいて。
そいつは「ザマーミロ」と言ってきた。さっきよりも身体が軽かったからぶん殴ろうとした。
そしたらそいつが姿を変えて。背中に半透明の翼を生やした・・多分女の人がいた。
その人は「気が済みましたか」と話しかける。ちゃんと殴れてないから「まだ」と即答した。
「だったら目を覚ましなさい?」
その言葉と共にそのままその人は消えた。一体なんだったのだろうか?
そう思うのも束の間、見なれた世界が一変した。また世界が宇宙のように真っ暗になった。
*
次に世界が色づいた時、目に映ったのは真っ白で何もない。
ああ、死んでしまったのかと思った。けど、その考えは数秒で消えた。
腕に管が繋がっていて、身体には何かがかかっている感触と柔らかい感触があった。
それに頭はまだぼんやりして。思考回路がまだ可笑しい。
「気が付いたか?」と聞きなれた声がした。喧嘩したあいつだった。
その後、誰かを呼びに行った。それから色々何かやられたけど、覚えていない。
一通りの流れが済んだ所で、あいつがまた来た。
聞けば雨の中でぶっ倒れていたらしく、誰かが通報して病院に運ばれた、らしい。
高熱で酷くうなされていて、一時は死んでしまうんじゃないかと言われていたそうだ。
そして1番驚いたのは、今日が5日後だった事。5日も寝てたと言う感覚は全くなかった。
気になった事があったから、聞いた。
「ずっといた・・?」
すると頷いた。何故か涙が流れた。拭いたくても力が出ない。
泣いた事にあいつは驚いていた。驚く事なのだろうか。
「ごめん・・・ありがとう」
ようやく気が済んだ・・と思う。念の為に熱が下がって本調子になったら一発殴ろう。
・・もしあの時「気が済んだ」と答えていたら、多分あの世行きだったんじゃないかと寒気がした。
あの時いた女の人は、羽根は妖精のようだったけど恐らく天使だと思う。
あの人がいなければ謝る事も出来ず、こうして感謝できる事もなかった気がする。
だからもう1度小さな声で「ありがとう」と呟いた。
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