L a s t  T a l k  .


Morning 「おはよう。お寝坊さん。徹夜でテスト勉強御疲れ様。」 「・・・何でお前がいるんだ?」 「そんなのどうだっていいでしょ?無用心だね。鍵なんか開けっ放しだよ?」 「・・・?・・どうでもいい・・何しに来たんだよ」 「なんとなく会いに来ただけ・・かな」 「何となくってなー・・着替えるからその辺で待ってろ」 「うん。そうするよ」 After noon 「はい。水でいいか?」 「うん、ありがとう。」 「って言うかさ・・毎日学校で会っているだろ・・土日祝日は何か無いと会わないか」 「そうだね。」 「・・・何か隠してるだろ?そう言う表情は隠し事の表情だって誰かが言ってた」 「誰に聞いたの?・・どうでもいいや・・どうしてそう思うの?」 「だから隠し事してる表情だと思ったからだって」 「ふーん・・アオヤには敵わないな。さすが秀才」 「んなことないな・・お前は秀才じゃなくて天才じゃないか」 「僕は天才じゃないって」 「嘘付け。学年1位のくせに」 「あははっ・・でも今度のテストは1位じゃないかも」 「は?またユキミも変な冗談をいうんだな」 「冗談じゃないよ」 「テスト勉強してないとか・・か?」 「ううん。テスト勉強は毎回殆どしないよ?」 「努力している奴はすぐにそう言うもんだ。嘘つくの本当に下手だな。」 「嘘じゃないって」 「・・・何だ。じゃあどうした」 「明日僕はいないから」 「ああ、学校休むのか。用事か?」 「んー・・正しくは明日も明後日もこの先ずっと何処を探しても僕はいないよ」 「親の転勤か?急だな」 「それでもないかな?」 「だったら何だよ」 「・・・・・・・・・・・・・・・・・・。」 「何で黙ってるんだ?」 「・・・・・・・・・・・・・・・・・・。」 「早く言えよ」 「そんなに気になる?」 「そこまで言われればな」 「人間って面白いね。話を引っ張れば引っ張るほど興味を持つから」 「もったいぶるなって思うからな・・それが面白いかは知らんけど」 「へぇ・・・」 「で?この先ずっといない理由は何だ?」 「僕、さ。もう寿命なんだ」 「・・・?」 「訳分からないよね?」 「さっぱりだな」 「要するに、もうこの世界の住人ではいられないって事」 「死ぬのか?」 「それに近い・・かな」 「近いって・・違うのか?」 「少しだけ。」 「ふーん・・」 「何となく会いたかったのは、そのせいかもしれないね」 「哀しくないの?」 「別に・・信じられないしな。信じていても哀しいの通り越してるし。」 「そっか、よかった」 「どうして?」 「哀しい別れよりも哀しくない・・何気ない別れ方が良かったから」 「・・・・・・・・・・・・・・・・。」 「・・1つだけ聞くけどいいか」 「何?」 「お前って何?」 「僕?僕はね・・・・」 ”              だよ” 「・・・・・・・。」 「あ、お願い聞いてもらって良い?」 「何だよ」 『チュッ』 「な・・何するんだ」 「頬にキスしただけだけど?・・仲良くしてくれて有難う。」 「ああ」 「これでようやくつっかえが取れた。気持ちを不完全に残すのはどうも嫌だから」 「そうか。でも頬にキスはないだろ」 「何処かの国ではお礼にキスをするって・・違ったかな?あれ?結婚だっけかお礼は」 「お礼に結婚・・そんな国はないぞ?」 「ガタが来たみたい。変な知識が混ざり始めてる・・」 「やっぱりお前・・              なんだな」 「さっきからそう言ってるでしょう?」 「・・・」 「さて、僕はこの辺で。会う事は多分・・絶対ないけど、またね」 「お前は人間だからな」 「え?違うよ。だって僕は              だから。不完全な人間だよ」 「最後に教えてやる。世の中なあ・・完全な人間なんていない」 「え?君も              なの?」 「違う。あー・・お前に説明すると時間がかかって面倒だ。とにかく完全な人間はいない」 「・・・?・・・まあいいや。バイバイ」 ** あいつが帰った後、コップを見た。中の水は減っていなかった。 そして翌日、あいつは予告どおりいなかった。担任は突然転校したと言っていた。 テストはあいつに代わって俺が学年1位になった。 嬉しいような、哀しいような複雑な気持ちだ。 「アオヤ」 ユキミの声が聞こえた気がした。振り向いても何処にもいない。 あるのはユキミが”人間”だった事を裏付ける席だけだった。
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